お迎えの帰り道。夕暮れで、花々がキラキラしていて美しい。長くてのびる影がわたしとこどもをつなげる。ヨーイドン、ソレーと、駆けるこどもは、無心に手足を動かして地面を蹴る。駆けるためにだけにただ駆けている。その無垢な姿はどんなときもわたしの心を捉えて離さない。夜寝るときは、必ず歌を歌う。カエルの歌、むすんでひらいて、大きな栗の木の下で、キラキラ星。上手く歌おうという心は微塵もなく、ただ歌うためだけに歌っている。途中で音をすこし外しながら、一所懸命歌う声に、わたしは毎晩、心があたたかくなる。私たち大人も、駆けるためだけに駆け、歌うためだけに歌い、生きるためだけに生きれたらどんなによいだろう。毎日笑って泣いて、毎日がたからものだね。ママはたくさんのことを教えてもらってるよ。毎日ありがとう。大好きよ。
今日の言葉＊
人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。
星野道夫
つれづれ 